2021.1.18 かんぽ生命保険の営業活動再開について

日本郵政グループは,令和2年10月5日より,かんぽ生命保険の営業活動を再開しましたが,当面は保険商品の積極的な勧誘は自粛するとしていました。

弁護団の意見

当弁護団は,以下の理由から,日本郵政グループによるかんぽ生命保険の営業活動再開には反対であり,営業活動再開は,問題事例が全て適正に解決され,その結果にしたがって,当時の経営陣及び営業担当者が,顧客に被害を発生させた責任をとった後に行われるべきであると考えています。


弁護団に寄せられている相談

かんぽ生命は,12月14日付の「業務改善計画の進捗状況について」において,顧客都合によるもの等を除き,概ね顧客対応を完了していると発表していますが,当弁護団には,現在(令和3年1月14日時点)も,かんぽ生命被害に関する相談が寄せられていますし,当弁護団が対応した相談事案の中には,かんぽ生命に対し,被害の実態を訴えたにもかかわらず,かんぽ生命からは,申出の事実が確認できないとか,長年にわたって契約内容の通知を行ってきたから内容を理解していたはずであるなどとして,何らの解決措置も行わないとの回答が行われた事案が散見されています。

さらに,当弁護団の相談案件の中には,高齢や病気などにより自分では判断することができなくなった顧客について,多数の契約を締結させ,高額の保険料を支払わせており,その後,顧客が家庭裁判所からの成年後見開始の審判を受けて,家庭裁判所より選任された成年後見人が問題解決のために活動を行っている事案も存在しています。

また,かんぽ生命が行ったとしている調査に関しても,当弁護団には「かんぽ生命からの電話があったので事情を説明したが,こちらの状況が伝わらない」「かんぽ生命から電話で質問を受けたが,意味がよく分からず,どのように回答すれば良いのか分からない」などの相談が寄せられていました。


かんぽ生命による調査に対する疑問

このような相談状況からすれば,かんぽ生命による調査は,表面的かつ形式的にしか行われておらず,個々の被害実態に即した一般人である顧客に理解できる方法での調査が行われているとはいえないものと思われますし,顧客から申出があった被害についても,かんぽ生命は,一見して明らかに違法な案件にしか対応していないのではないか,本来はより詳細を調査するべき事案についても事実が確認できないから解決措置をとらないとしているのではないかなどの疑問が生じるところです。

さらに,被害の中心である高齢者の中には,自分では問題があることに気づいていない,状況を正確に説明することができないなどの事情により,かんぽ生命の調査に適切に対応することができないケースが存在しており,かんぽ生命の調査は,そのような被害者について,問題を把握することができていないのではないかと感じています。


今なお不十分な対応

このような状況を考慮すれば,かんぽ生命による調査や問題の実態の把握,問題の解決は不十分であり,現在かんぽ生命が把握している限られた範囲の問題を前提とする再発防止策や責任追及では,不十分と考えざるを得ません。

当弁護団は,かんぽ生命において,未だ解決されていない,あるいは発見されていない被害についても,速やかに調査の上,被害の解決を図るべきであり,これによって被害実態を正確に把握した上で,責任の所在を明確にし,厳正な処分を行い,再発防止策を万全にした後に,営業再開を行うべきと考えています。

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